債権者によっては、支払督促ではなく、訴訟申し立てにより債権回収を図るケースがあります。債権者が訴訟申し立てを選択するメリットとしては、管轄裁判所にあります。支払督促では費用が安いメリットはありますが、債務者から異議が出され、通常訴訟に移行してしまうと、債務者の住所を管轄する裁判所で争わなければならず、全国展開していないような債権者にとっては、時間とコストがかかってしまいます。一方、訴訟の申し立てならば、債務者と締結した契約書に裁判所の合意管轄が定められており、債権者の住所を管轄する裁判所に対し、申し立てが可能です。
このような背景から、積極的に訴訟を選択する債権者もいるのは事実です。そして、消滅時効期間を経過した債権について、訴訟を申し立てられるケースもあるようです。債権者としては、債務者側の知識の無いことを利用して、時効の中断を狙う目的によるものです。債務者側としては、債権者の思惑どおりに、債務を承認したり、支払いに合意したりすると、時効が中断することになります。
消滅時効期間が経過した債務について、訴訟を申し立てられたケースでも、時効の援用は可能です。法格言で、「権利の上に眠る者は保護に値せず」と言われるのは、このように時効が完成するまで手を打たなかった債権者を法が保護する必要はないということを指しています。